デデキント切断

数学の独学のために書いています。 極力避けるようにしていますが、間違った内容が入る可能性があります。

切断のしかた

実数\mathbb{R}の連続性をデデキント切断で確認します。

空ではない集合A,B \subset \mathbb{R}

A \cup B = \mathbb{R}, \qquad A \cap B = \varnothing

となり、

任意の a \in A, b \in Bに対して a \lt bが成り立つ

とします。(つまりA \lt B)

どんな実数もAまたはBのどちらかに含まれるということですね。

こうした組み分け(A,B)\mathbb{R}の切断といい、ふたつの集合の最大値最小値を確かめます。

s \in \mathbb{R}に対して、

 A = \{ x \mid x \lt s, x \in \mathbb{R} \}

 B = \{ x \mid x \geq s, x \in \mathbb{R} \}

とすると A,B\mathbb{R}の切断となって、Aには最大値が存在せず、Bには最小値が存在します。この例ではs自身をBの方に含めましたが、同様にAの方に含めても切断が成り立ちます。

つまり、ある実数より大きな数、小さな数の集合をつくり、そのどちらかにその実数を含めると切断がつくれます。Aを上組、Bを下組と言ったりします。

デデキントの切断ではこのが重要になります。

デデキントの定理

\mathbb{R}の切断(A,B)が与えられたとき、一つの実数sが存在して、以下のどちらかが成り立つ

  • Aの最大値がsで、Bの最小値が存在しない
  • Aの最大値が存在せず、Bの最小値がs

実数ではこの定理が成り立ちます。

ただし切断する集合が実数でなくなるとその限りではありません。

そもそも、切断(A,B)は以下の三つの場合が考えられます。

  1. Aの最大値とBの最小値がともに存在する
  2. Aの最大値とBの最小値がともに存在しない
  3. Aの最大値とBの最小値、どちらか一方のみが存在する

\mathbb{R}の切断は3の場合ですね。

1の場合の例    整数全体の集合\mathbb{Z}

 A = \{\cdots, -2, -1, 0 \} \quad B = \{1, 2 , \cdots \}

とすると(A,B)\mathbb{Z}の切断となり、1の場合を満たします。

整数の切断はこの場合のみです。

2の場合の例    有理数全体の集合\mathbb{Q}

\sqrt{2}より大きい数、小さい数で切断がつくれますが、\sqrt{2}自体は無理数ですのでどちらの集合にも含まれず、2の場合を満たします。

ただし、有理数では3の場合の切断もあり得ます。

 

有理数、実数では1の場合の切断はあり得ません。

命題1

実数の切断(A,B)ではAの最大値とBの最小値がともに存在することはない。

証明

実数\mathbb{R}の切断(A,B)で、Aに最大値、Bに最小値が存在すると仮定する。

a = \max A, b = \min B

とすると、a \in A, b \in Bとなり、 A \lt Bよりa \lt bが成り立つ。

実数の性質から、 a \lt c \lt bとなるような c \in \mathbb{R}をとることができる。(ここでいう性質は実数の稠密性です。有理数でも成り立ちます。下に捕捉を載せました。)

しかしc \notin A \cup Bとなり、これは切断の定義のひとつA \cup B = \mathbb{R}に反する。

よって実数の切断(A,B)ではAの最大値とBの最小値がともに存在することはない。

補足

稠密性とは、要するに集合がぎっしり詰まっているということです。

実数において、01の間の数には0.5のような数が存在します。さらに、00.5の間にも無数に実数が存在します。整数の集合ではこのようなことは成り立ちません。

このことを一般的に言うと、

集合Xが稠密であるとは、任意のa, b \in X (a \lt b)に対してa \lt c \lt bとなるようなc \in Xが存在することである。

となります。位相空間論では閉包という概念で表したりもします。

結局何が言いたいのか

デデキント切断の定義を見ただけで意図が理解できる人は少ないと思います。

ざっくりいうと、実数には隙間がないということです。これはぎっしり詰まっていると表現した稠密性とはまた違うことです。

有理数では\sqrt{2}\sqrt{3}といった隙間ができてしまいます。

これらの隙間の数は、有理数の集合の端に触れずに有理数の切断ができます。しかし実数ではそのように切断をすることができる数はありません。

 

参考

書籍: