数学の独学のために書いています。 極力避けるようにしていますが、間違った内容が入る可能性があります。
数列とは
数列はのような数の並びです。
集合とはまた違ったもので、順番があります。
また、といった数列はと同じではありません。集合ではとなります。
無限数列とはが無限に連なった数列を言います。
定義1
関数のことを数列といい、などとあらわす。
ここでは写像の値域をとしていますが、もっと一般的に何でもいいです。
複素数が値域でも数列ですし、点でも点列として数列となります。
この定義では、となります。
また、定義域が自然数全体となっていますが、これを制限して例えば項が3つの数列も定義できます。
以下、無限数列を扱っていきます。
数列の極限
数列の極限はのが限りなく大きくなるにつれてが一定の値に限りなく近づくとき、数列はに収束する、と表現されます。このときは極限値といいます。また、収束しない場合は発散するといいます。
この時、下のように書きます。
または
収束する数列の例
数列の一般項をとすると
となり、どんどん小さくなりながらも0以上であることがわかります。
その極限は
となります。
この極限という考え方をより厳密にしたいです。
定義2
数列がある値に収束するとは、
任意のに対してが存在して
となることをいう。
先ほどの例を当てはめてみましょう
のが限りなく大きくなるにつれて0に収束することを示します。
定義2で数列の収束を厳密に示すことができますが、式が何を意図しているかはわかりにくいです。
まず、は基本、0よりは大きいがとにかく小さい数と認識してください。
定義の条件の中にある
はとの距離がよりも小さいことを意味するので、距離をとても小さいよりもさらに小さくしなさいという制限を意味します。
そしてこの制限はの時にだけ成り立てばいいです。を定めるとそれより大きいつまり、数列において、より先の番号の項の時に成り立ってほしいということで、よりも小さい番号の項は気にしなくともよいということを意味します。
任意のに対してが存在して~、という言葉はを固定しておいて、をごとに定めて条件を満たそうということです。
絶対値の代わりに距離関数を使うことで実数の連なる数列だけでなく、やの点列といった数列の収束も定義できます。
定義3
の距離関数をとする。
の一点とに対して、
を点の近傍という。
距離関数というのはの二点の距離を表すものだと思ってください。距離関数はいろいろと定義できますが、以下の四つの条件があります。
- は実数で0以上
- 三角不等式が成り立つ
距離関数の有名な例は、の二点の距離関数でユークリッド距離として中学の数学でも習います。
近傍はある点からの距離がよりも小さい点全体の集合を表します。
この近傍の概念を使って数列の収束を定義できます。
定義4
数列がある値に収束するとは、
任意のに対してが存在して
となることをいう。
もろもろの性質
先ほどの収束の定理によって高校数学では証明できなかった数々のことが証明できるようになります。
命題5
数列の極限値が存在するとき、必ずそれはただ一つである。
証明
数列の極限値がであると仮定する。
この時任意のに対してが存在して
が同時に成り立つ。
とするとが成り立つ。
しかしは任意にとっていいのでとが重ならないよう、つまりとなるようにをとることができるので矛盾が生じる。(などととればよい)
よって数列の極限値が存在するとき、それはただ一つに定まる。
直感的にわかる命題ですが、厳密に証明するとこうなるのですね。
定理6
実数列がともに収束するとき
ただし3の時には
証明
とする。
1の証明
任意のに対して
となるようなが存在し、とおく。
のとき、以下が成り立つ。
\begin{split} \displaystyle | (a_n + b_n)- (a + b)| &\leq |a_n - a| +|b_n- b| \\ &\lt \frac{\varepsilon}{2} + \frac{\varepsilon}{2} \\ &=\varepsilon \end{split}
よって
となるので
となる。
同様にも示せる。
意外にもこの定理は高校数学の教科書で証明されていません。
ここでは証明の最初のほうにの代わりとしてを使っています。こうすることでをの右辺をにすることができるのですが、この方法は少々面倒です。
最初にとすると足したときにとなりますが、任意の0より大きいは二倍したところでとることのできる値は変わらず、本質的に問題はありません。
以降、このような場合での係数が0より大きい実数の定数であるとき、証明が成り立つとします。
補足
数列の収束の定義を見直してみましょう。
"任意のに対してが存在して~"とあります。
順番はを決めた後にを決めています。
はに関係のない数ですね。
ですので先ほどの係数が定数の場合と記したわけです。
2の証明
任意のに対して
となるようなが存在し、とおく。
のとき\begin{split}|a_nb_n - ab| &= |(a_n - a)b + a_n(b_n - b)| \\ &\leq |(a_n - a)b| +| a_n(b_n - b)| \\ &=|a_n||b| + |(a_n - a) + a||b_n - b| \\ &\leq |a_n||b| + (|a_n - a|+| a|)|b_n - b| \\ &\lt \varepsilon |b| + (\varepsilon + |a|)\varepsilon \\ &=\varepsilon' \end{split}
よって$n \geq n_0 \implies |a_nb_n - ab| \lt \varepsilon'$
となり、はが小さくなるにつれてどこまでも小さくなっていくのでが成り立つ。
以下の定理6.3の証明ではの大きさを制限します。 のような形でもいいのは、がとても小さいとき、収束の定義の目的と合うからです。
の時はが成り立つようなを取るようにするとが成り立ちます。
3の証明
よりが成り立つことを示せば定理6.2より十分。とする。
を十分大きくすると、$\displaystyle \begin{split} \left|\frac{1}{b_n} - \frac{1}{b} \right| &= \left|\frac{b_n - b}{bb_n} \right| \\ &\leq\frac{|b_n - b|}{|b|(|b| - |b_n - b|)} \\ &\lt \frac{\varepsilon}{|b|(|b| - \frac{|b|}{2})} \\ &= \varepsilon'\end{split} $
よって が成り立つ。途中式のわかりずらいところのメモを書いておきます。
などは正数で不等号の向きに関係ないのでが成り立てば上の式が成り立つことがわかります。
三角不等式よりが成り立つのでこれを変形すると導出できます。
絶対値を距離関数としてみるととも書けます。
分子のはに置き換えていますが、分母はです。
分子だけを入れ替えた場合、不等号が成り立つのは明らかでしょう。
正数において、分母が小さいほうが数は大きくなりますが、分母のは係数が負なのでより大きいに置き換えて不等号が成り立つことがわかります。()
分子のをに置き換えてしまうと定数になってしまい、意味がありません。
分母のをに置き換えてしまうと、が小さくなるときにが小さくなることが不明瞭です。
これらの置き換えでの係数が正の定数になっています。
参考
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